『チャイメリカ』

3月の初めに観に行ってきました。

 

天安門事件その最中に撮られた有名な写真の一枚、「戦車男」(Tank man)を題材にされたストレートプレイです。

アメリカの30代の作家さんの作品で私は海外の方が書いた現代劇を多分始めてストレートプレイで観ました。

 

様々な意味で難しい題材で、これぞ演劇というような印象でしたが、一方で映画を見ているような明解な話の運びでした。ウィットさやテンポをすごく考えられている脚本でその原作の良さを損なわない翻訳と演出だったのだと思います。英語がわからないので、原本を読んだわけではないのですが…。

 

以下ネタバレしてます。

 

主人公のアメリカ人写真家、ジョー(田中圭)は天安門事件において「戦車男」の写真を撮った1人です。そしてその時の高揚感を忘れられないまま40歳を超えます。

リン(満島真之介)は当事者として天安門事件の現場にいました。30年経っても彼はまだ天安門事件のただ中にいます。

2人は長い間「友人」として付き合っています。

「戦車男」が生きているかもしれない、そのことを知るとジョーは躍起になって「彼」を探し出そうとします。ジョーは自分が「正しい」と思うことを貫こうとしますが、彼の悪意のない数々の行動で周りの人がどんどん傷つき、時に追い込まれていきます。

ヒロイズムとはジャーナリズムとはなにか?それが大きなテーマで。

正義感とは何か?当事者であることと部外者であること、見えるものの違い、たくさんの問いを投げかけてくる舞台でした。

ジョーは一貫して「戦車男」を追いかけます。決して「天安門事件」ではないのです。そのことから、ジョーは「天安門事件」をある種の「物語」として捉えているのだと思いました。その場にいたリンや当時を生きていた中国人にとって事件は「事実」なのに。

ジョーは自分の行動が相手を傷つけたと分かるとすぐに謝る。それでもすぐにまた何も考えずに行動してまた人を傷つける。それなのに、リンはジョーのことを「友人」と言い続ける。暗い部屋から自分を助け出してくれ、と伝えようとする。その姿に息がつまる。

ジョーの浅はかさは自分の中にも覚えがあって自分が見て見ぬ振りをしようとしていることを突きつけられた気分。

お芝居の結末に観劇後は泣き出したい気持ちになりました。

 

芝居を見た気持ちを言葉にしてしまうと

流れていってしまう気がしたのですが、チャイメリカを観たことを残したくて。

 

 

田中圭さんのブレイクからか観客のほとんどが女性で、驚きました。