『お勢、断行』

セットもお衣装も劇場の作りも相まって完成度の高いお芝居。

湿気が多くてお芝居だとわかっているのに生々しいお芝居。

実在する事件をモチーフにしているからかもしれないけれど、ああーこれが江戸川乱歩の世界なのかと。江戸川乱歩に一切触れたことがない人間の感想です。

あらすじ読んだだけで怖くて読めないんだわ江戸川乱歩。ドラマも見れないんだわ。

今回、2年前にキャストがすごく魅力的で悩みながらもチケットを購入するも、中止になったのもあって再演決まってなんの悩みもなく観に行くことにしたんですけど(しかも気合をいれてめっちゃいい席買ってた)、やっぱりめっちゃ怖かったです…。江戸川乱歩の世界観…ほぼ倉持さんのオリジナルとはいえ、多分すごく江戸川乱歩を大事にしてるんじゃないかな?(読んだことがないから憶測でしかない)

生々しくて物語として捉えきれない自分がいて観終わった後の体力の消耗がすごかった(仕事の疲れとも言い切れない)、その一方で物語を作ることについて考えてる自分とがいて不思議な感覚でした。演者の所作の美しさが作り上げた世界について考えさせたのかな。とりあえずめっちゃ人死ぬやん…。

以前観た『パ・ラパパンパン』(主人公の作家が自分の書いた物語の世界に迷い込み悪戦苦闘するお話)のことを思い出したりしていた。物語を構築していく過程を感じられるのがお芝居の好きなところでもある。

物語自体は悲惨だったけれど、コメディな部分もあって暗くなりすぎることもなく本当に完成度が高かった。ただ、階段から人が転げ落ちるところとか、そこは笑うとこだろか?というとこで笑い声が上がっていて、先入観て難しいなって思いました。

お着物も綺麗だったしすごくいい舞台だったけれど、江戸川乱歩怖すぎて、再演があっても観に行くかは謎です。あの湿っぽさがもう…怖いのよ…。

ところで休演になってしまったけれど代議士役が梶原善さんなのがすごくしっくりくる…あの湿っぽさには梶原さんだよね…。でも代役の阿岐之将一さんも恰幅よくて代議士感すごかったし、急遽とは思えないくらいの馴染み具合、そしてお芝居中の物理的な労働を考えるとあれぐらいの若々しさがあってもいいなって思いました。

倉科カナさんを舞台で拝見するのは3回目。セリフが明瞭でテレビとの印象がすごく変わる俳優さんの1人。

私自身の気質からいうと多分合わないお芝居だったんですけど(なんせ怖い)。すごくいいお芝居だったのも事実で。こんなことあるんだなぁ。

多分江戸川乱歩との触れ合いはこれが最初で最後です。